くるい咲き
―冬の休眠に入り損ね―
11月12日号掲載
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ハナカイドウ
 桜の花が秋に咲いたりするくるい咲きは、時にニュースとして紹介される。気象異変でもあるのかと話題になるが、これはそれほど不思議な現象ではない。

 花木類の多くは落葉樹であり、冬は葉を落とし、休眠した状態で、厳しい寒さに耐えるようになっている。このための準備は、日が短くなり、温度が下がり始める秋のうちに始める。まず、かなり早いうちに、葉では冬越しの状態へ誘導する物質が作られる。そして、枝や幹の植物全体に移行してから落葉するのだが、移行が終わらないうちに、何らかの理由で、葉が強制的に落とされてしまうと、植物の休眠が不完全になる。こんな時、秋はちょうど春のように気候が温暖なので、花が咲いてしまうのだ。これが、くるい咲きの理由である。

 葉が落ちるのは、たとえば、害虫が大発生して、葉を全部食べてしまったり、あるいは強い台風が来て、風で葉がふるい落とされたりした時などである。もっとも、春に正常に咲いたときよりは、花の数はかなり少ないのが普通である。この現象は、もちろん、人工的に葉を落としても再現することができる。

 ところで、常緑性のツツジ類などでも時にはくるい咲きが見られるが、これは落葉樹の場合とは少し異なる。多くの植物は「花には三春の約あり」というように、決まった開花期があるものだが、四季咲き性といわれる植物は温度さえ適当であればいつでも開花する。四季の無い熱帯原産のものにこの性質を持ったものもある。また、いつでも花を咲かせたいという欲望を満たすために、園芸植物では古来より四季咲き性に改良するように努力されてきたし、実際にバラやカーネーションでは見事に成功している。四季咲き性とまでいかなくても、改良の過程でこの性質を幾分か持ち合わせているようになった植物もかなり多いのである。このような植物では、春に咲くはずのものが、時には花の数は少ないが、秋にも咲くことがある。サツキやウンシュウミカンなどは秋にもちらほら、花を見ることがある。