モモ
―ひな祭り用は促成栽培―
3月12日号掲載
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ハナモモ
 「十日の菊」、「六日の菖蒲」という言葉がある。キクは9月9日の重陽の節句、ショウブは5月5日の端午の節句からそれぞれ1日でも遅れると値打ちがないという意味である。寡聞にして「四日の桃」という言葉は知らないが、モモの花とて同じこと、3月3日のひな祭りが過ぎてから咲いたのでは値打ちがない。

 もっとも、旧暦での習慣をそのまま新暦(太陽歴)に移したのだから、モモやハナショウブが節句に間に合うはずもない。だから花屋で売っているものは全て促成ものである。せめて、一か月遅れの新暦にでもすれば自然咲きのものが使えるのだが。

 ところで、モモには食用にする果物のモモと、観賞用の花モモとがある。食用にも生食に向く白桃と、缶詰用の黄桃とがある。果物用のモモは花つきが花モモよりやや少ないが、それでも結構美しい。

 モモの開花促成は切り枝を用いる。水の入ったバケツに切り枝を入れ、温室内に置くと春先だと10日余りで開花する。つまり、根の無い状態で花を咲かせるわけである。ユキヤナギやレンギョウ、サクラなど、花屋で見かけるほとんどの花木類は切り枝で咲かせたものである。この促成技術はかなり古くからあって、昔は土中に穴を掘った室(むろ)の中に入れて咲かせていたのだが、今は温室で暖房して咲かせる。

 早春にふくらむネコヤナギなど部屋の中に飾っているうちに、花が進んでいくのを経験した人は多いはずだ。ウメやモモとて同じこと。近くに果樹園でもあれば冬の剪定で切り落とした枝をいただくなり、庭の枝を切るなどして、わが家で促成してみてはいかが。ただ、高い温度と湿度が欲しいので、家庭では風呂場に置くのがもっともよい。ときどき霧吹きで湿りを与えると半月もすれば見事に花が咲いてくる。
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