花と名前
―多い「ムードぴったり」―
2月19日号掲載
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ムラサキシキブ
 花の名前はいかにも興趣をそそるようなものが多い。ムラサキシキブ(紫式部)は古典的な優雅さを、ミヤコワスレ(都忘れ)は何か物寂しさを、クンシラン(君子蘭)は高貴さを感じる。このように、名前はその植物を連想する雰囲気を持っている。サギソウは花の形がまさに鷺(サギ)そのものの感じだし、自然界の不思議さを思わせる。

 外来の観葉植物などは和名がないものも多いが、これらはむしろ英名や学名をそのまま使う方が、なんとなく新しい植物のような雰囲気が出る。また、和名があっても、従来からの習慣や洋花の雰囲気を出すため、英名を使っていることも多い。エーデルワイスはアルプスの高山を思わせるし、ジャスミンはソケイと呼ぶより、いかにも芳香の良さを感じさせる。ジャスミンといえばマダガスカルジャスミンがその香りと白いかれんな花が好まれて、鉢花として出回っている。これは英名であるが、実はジャスミンとは関係の無いトウワタ科の植物なのだ(ジャスミンはヒイラギ科)。しかし、マダガスカルシタキソウという和名を用いるより、マダガスカルジャスミンの英名の方が雰囲気が出ているように思える。

 でも、耳慣れない学名のままではなじみにくいものもある。そこでドラセナ・マッサンゲアーナを「幸福の木」、ユッカ・エレファンティペスを「青年の木」、クラッセラ・オブリクアを「金のなる木」などと、ニックネームをつけている場合がある。これは営業政策としては大ヒットした。しかし、ドラセナ・コンパクタを黒百合、ディジゴセカ(アラレア)をチョウセンモミジなどと、単純にごまかすだけの売らんかなの命名が時にあるのは困ったものだ。また、「シ」(死)をきらって、シクラメンをサイクラメン、シネラリアをサイネリアなどと呼ぶこともあるが、名前を混乱させるだけであろう。日常から正しい名前で植物と親しむようにして欲しい。