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園芸豆知識・面白い形態編





マングローブのこと






@西表島仲間川の河口付近。両岸は広大なマングローブ。

A西表島後良川の河口付近のマングローブ

B西表島浦内川口付近の広大なマングローブを上から見た風景
 ★マンブローブといえば、熱帯を思い浮かべ、何となくロマンティックな雰囲気を感じませんか。マングローブは熱帯を代表する景観の一つで、海岸の近くに樹高20mを越すような鬱蒼たる森林が形成されます。日本でも沖縄県や鹿児島県にかなりたくさんあるのです。熱帯に比べると樹高などがやや小ぶりですが、それでも、八重山諸島や沖縄島などにはかなり規模の大きいマングローブが存在します(写真@AB)。

 ★マングローブとは熱帯から亜熱帯にかけての河口などの泥湿地にできる森林のことを云います。いわば、干潟のような所に出来る森林で、海岸でも波あたりの強い場所には出来ません。河口付近は満潮時には海水が浸り、干潮時には川が流れる汽水域(潮間帯)がありますが、その付近に出来る森林なのです。海の近くは耐塩性のより強い植物が、そしてその奥の方や上流に行くほど耐塩性がやや弱い植物が分布しますから、一つのマングローブでも多くの種類が分布します。いずれにしても、マングローブは森林の名称ですから、マングローブという名前の植物は無いのです。

 ★マングローブを構成する植物は、世界に70〜100種程度あるとされ、ヒルギ科、クマツヅラ科、ハマザクロ科などが多いのです。日本のマングローブでは、ヒルギ科のオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギなどが代表的で、ハマザクロ(ハマザクロ科)、ヒルギダマシ(ヒルギダマシ科)、ヒルギモドキ(シクンシ科)、ニッパヤシ(ヤシ科)などがあります。

 ★マングローブの育つところは、塩分を多く含む泥湿地ですから、土壌中は酸素不足状態です。このため、根は地中深く伸びることが出来ないのです。ですから、マングローブの植物は、根が地上部を支える工夫と、呼吸するための工夫が必要となります。このため、根の形態がたいへんに特異的な姿になっています。


Cヤエヤマヒルギの蛸足状の支柱根

Dメヒルギの板根状の根

Eオヒルギの膝根(しっこん)

Fハマザクロ(マヤブシキ)の筍根(ジュンコン)


★左側の写真で、根の形態が特徴的な4つのタイプを示しました。

 ★ヤエヤマヒルギは「蛸の足」状の気根を出して地上部を支えています。いわば支え棒をたくさん出しているわけです。そして、この根は呼吸する役割も果たしています。支柱根でもあり、同時に呼吸根でもあるわけです(写真C)(気根の話参照)。

 ★メヒルギは板状の根を出して植物を支えます。そしてこれは、呼吸する役割も果たしています。このような根の形態を板根(バンコン)といいます(写真D)(板根の話参照)。
 

G
左:ヤエヤマヒルギの胎生種子
中:メヒルギの胎生種子
右:オヒルギの胎生種子

H葉が数枚出たばかりのヤエヤマヒルギ
 ★オヒルギの根はたいへんに特徴的です。根は普通は下向きに伸びるものですが、オヒルギの場合はその逆の現象が起こります。地中浅く横に広がった根から、空気を求めて上に伸びる根が地上に出ます。そして、急角度で折れ曲がって再び地中に入ります。このような根が大量に出来るので、かなり異様な姿に見えます。この折れ曲がった根の姿が膝を曲げたように見えるので、これを膝根(シッコン)といいます(写真E)。

 ★ハマザクロやヒルギダマシは地中浅く伸びる根から、地上に向かって垂直に根を出します。これもまた、根は地下に伸びる原則からは逆の行動です。これは、膝根のように折れ曲がりませんから、この姿はタケノコのようです。それで、この根を筍根(ジュンコン)と云います(写真F)。
 
 ★マングローブの大きな特色の一つにヒルギ科の種子のことがあります。主要な樹種であるヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギなどは、果実が枝についている状態で、根が伸び始め、ある程度の大きさに達すると、その根の先端に新芽がついた状態で、親の木から抜け落ちます。このように、親植物に着いたままで種子が育つものを胎生種子と呼びます。親を離れた種子は、海流に乗って各所に広がります。写真Gの種子は海岸に漂着しているのを拾ったものです。なお、干潮時などに落下して、うまく土中に突き刺さり、そのまま生長する場合もあります。

★この種子を鉢植えして、葉が数枚出た程度の幼株がマングローブの名前で観葉植物として販売されています(写真H)。



Iアダン

Jアダンの果実

Kニッパヤシ(ベトナム)
 ★沖縄地方などの海岸にはタコノキに似た姿で、パイナップルのような大きな実がなるアダンが各地に群生していますが、マングローブも上流部などにこのアダンの群生が見られます(写真IJ)

 ★西表島のマングローブにはニッパヤシも少し生育しますが、東南アジアの熱帯では、ニッパヤシだけの純林で広大なマングローブを形成している場合もあります(写真K)