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園芸豆知識・雑学編A植物知識編





ケシのこと



@ケシ(アヘンゲシ)の観賞用の1品種(イギリス)
 ★ケシは阿片(アヘン)を取る植物として知られていますが、日本では厚生労働大臣の許可無く栽培することが禁止されています。

 ★ケシはケシ科ケシ属に属する一年草の植物で、学名 Papaver somniferum、英名はOpium poppy、漢字で書けば芥子あるいは罌粟です。花は一重咲きで地味ですが、たいへん大きなケシ坊主が出来、これに傷を着けて出る汁液を乾燥させたものがアヘン、精製したものがモルヒネです。

 ★このケシには観賞用の園芸品種がたくさんあるのです。八重咲きのボタンのような豪華な花が咲くので、観賞用品種をボタンゲシと呼ぶこともあります(写真@)。

 ★日本のケシは桃山時代から江戸時代にかけて、中国から渡来したといわれています。これと平行して八重咲きの観賞用品種も導入されたようです。そして、江戸時代にはすばらしい観賞用品種が多数育成され、日本画や浮世絵などで好んで描かれるようになりました。日本画の名画にはしばしばケシが登場します。日本の誇る古典園芸植物の一つであると言えるでしょう。

Aガーデンの植栽で見た観賞用ケシ(イギリス)

B野草化して一重咲きの原種のように劣化したケシ(イギリス)

Cハカマオニゲシ(Papaver bracteatum)(オランダ)

D園芸店で販売されていたオニゲシやハカマオニゲシの苗や種子(オランダ)

 ★昭和30年代半ば頃までは江戸時代から続くケシ園がいくつか有り、多くの人がケシを楽しみ、日本画家などがスケッチする風景が見られました。しかし、残念ながらアヘンを採るケシと同じ植物だということで栽培が禁止され、昭和35年前後にケシ園は姿を消してしまいました。結果的に日本で特に発達したと思えるケシの伝統的園芸品種は姿を消し、ケシに関わる伝統文化は消滅してしまいました。たいへん惜しいことをしてしまったように思えてなりません。

 ★当時、江戸時代から代々続いていた私の知っているケシ園の園主さんも摘発され、全て焼却処分されてしまいましたが、これを消滅させるのはあまりにも惜しいと種子をくださったことがありました。それで、私の職場で、研究用栽培として厚生大臣の許可を得て、2アールほどの面積で数年間栽培したことがあります。ボタンに負けない豪華な花でした。採種用の株の選抜などを園主さんから指導を受けたりして、5年あまり栽培を続けましたが、手続きの煩わしさと検査のうるさいことなどで、その後、棒を折ってしまいました。

 ★その記録写真が残っていないのが残念ですが、たくさんの画家がスケッチに来ていましたから、どこかでそれが日本画になって残っていると思ったりしています。

 ★ケシ園だけでなく個人の庭で栽培している人もかなりいましたから、現在に至るもまだ山村部などで希に残っていることもあり、ときに摘発されたとのニュースが流れることがあります。こぼれ種子などでまだかなり生き残っているように思えます(ただし、選抜されたものではありませんから昔のような豪華なものは無さそうです)。また、海外から持ち帰った種子を播いて摘発される例もかなりあるようです。

 ★というのは、この観賞用ケシは、海外では禁止していない国が多く、ヨーロッパでは普通に庭園などで栽培されています。園芸店などでは種子や苗が販売されています(写真D)。イングリッシュガーデンなどの植栽には広く使われています(写真@A)。

 ★しかし、私が栽培していた日本の園芸品種に比べるとヨーロッパで見る花は貧弱なように思えます。かなり厳密に採種用株の選抜をしなければ見事な八重咲き花は得られません。こぼれ種で雑草のように育っているものでは、一重咲きの原種のような花に劣化してしまうものがかなり出てきます(写真B)。

 ★ちなみに、ケシの種子にはアヘンの成分は含まれていません。「けし粒ほどの」という表現があるぐらい小粒の種子ですが、独特の風味があるので、食用にします。七味唐辛子にも入っていますし、和菓子やあんパンなどの上にも着いています。ですから、誰でも食し、普通に見かけているものなのです。これらの種子は発芽しないように熱処理がされています。

 ★ケシは、葉柄が無く、葉が茎を巻くように着いていますから、これが他のケシ属植物との区別法として最も単純な見分け方になります。

 ★以上がアヘンを採る「ケシ」の話ですが、この他にもケシ属の植物でアヘンを多く含む種類は栽培が禁止されています。オニゲシに似たハカマオニゲシ(Papaver bracteatum)(写真C)、愛知県渥美半島に自生していたアツミゲシ(Papaver setigerum)などが栽培禁止種の代表的な種類です。このハカマオニゲシも観賞植物としてヨーロッパでは普通に栽培されています。


参考編



●栽培しても良いケシ科ケシ属の植物

Eヒナゲシ

Fシベリアヒナゲシ(アイスランドポピー)

Gオニゲシ

  ★ヒナゲシ(虞美人草)(写真E)、アイスランドポピー(シベリアヒナゲシ)(写真F)、オニゲシ(写真G)などは栽培して問題のないケシ属の植物です。このうちオニゲシの改良品種は、栽培が禁止されているハカマオニゲシと交雑されたものもあり、両種の区別はかなり難しいのが実態かと思います。



●ケシ属ではないが、「ケシ」の名が付いている植物


Hメコノプシス(ヒマラヤの青いケシ)

Iカリフォルニアポピー

Jシラユキゲシ
 ★ケシ属植物ではないが、ケシやpoppyの名が付いている植物があります。例えば、大阪花博で有名になった「ヒマラヤの青いケシ」(メコノプシス属)(写真H)、カリフォルニアポピー(エッショルツィア属)写真I)、シラユキゲシ(エオメコン属)(写真Jなどです。これらはケシ科ではあってもケシ属ではなく、アヘンとは無関係ですから、当然に栽培禁止の対象ではありません。



●タイマソウのこと


Kタイマソウの絵袋種子(オランダ)
 ★蛇足ですが、タイマ(タイマソウ)もケシと同様に麻薬成分を含む植物として日本では栽培が禁止されています。しかしながら、たとえば、オランダなどの園芸店では、絵袋詰めされた種子が販売されているのを見かけます(写真K)。間違えて買わないように、注意が必要です。さらに蛇足を重ねるなら、大麻は戦前までは重要な農作物として広く栽培されていました。茎はアサ繊維に、種子は油料になど用途の広い作物であったのですが、現在は栽培面積が激減しています。