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園芸豆知識・雑学編A植物知識編





熱帯の電照菊の話






@電照菊の夜景(渥美半島)
 ★渥美半島の電照菊の夜景は素晴らしい(写真@)。電照は菊の開花を抑制するために行っていることについては「電照菊って何?」のところで記載しましたが、植物の開花を調節する手段として、電照は広く実施されています。

 ★日本には四季があり、季節によって昼の長さや温度が大きく変化するので、年間を通じて様々な調節をしなければなりません。

 ★そこで、少し飛躍しすぎるようですが、熱帯の気候について思いをはせてみたいと思います。赤道直下の熱帯は、日本人の感覚からすると、ただ、暑いところという印象を持っていると思います。でも、温度については標高の高いところなら、涼しいところはいくらでもありますから、暑いところが熱帯というわけではありません。たとえば、赤道直下の国のケニアは、国全体の標高が2000m近くありますから、たいへん冷涼で快適な気候です。

 ★とすると、熱帯とは「熱」と書きながら必ずしも「熱」ではなく、少し冒険的に断定するなら、季節の変化がたいへん少ないところ、そして、冬が無いところと考えれば良さそうに思います。季節の変化がないということは、たとえば、赤道直下では、年間を通じて温度の変化が少なく、そして太陽の出ている時間(昼の時間)の変化も少ないと云うことになります。どんなに暑いところでも、太陽は午前6時頃に出て、午後6時頃に沈みます。ほぼ12時間の昼の長さですから、日本の夏とは全く異なります。


Aマレーシア・キャメロンハイランドのキクの生産風景

Bマレーシア・キャメロンハイランドのキクの生産ハウスの風景
 ★ですから、赤道直下では一年中、昼の長さは日本のお彼岸の頃と同じだと思えばよいのです。そこで、話をタイトル通りに「キク」の話に戻しますと、キクは短日植物で、12時間前後の昼の長さなら、短いと感じて花芽ができてしまいます。キクにとっては熱帯は一年中が秋なのです。ですから、日本の秋キクを熱帯に持っていけば、ポットマムのような短い草丈でいつでも花が咲いてしまいます。

 ★とすれば、熱帯でキクを栽培するには、どうすればよいのでしょう。昔は夏キクだけが栽培されていました。夏キクは、昼の長さに影響されないで、ある程度草丈が伸びてから花芽ができる性質があるからです。

 ★でも、今は、電照菊栽培の技術があります。花芽が出来ないように、半月か一月ほど電灯照明をすれば、十分な草丈が出来ます。そして、電灯照明を打ち切れば、一年中いつでも自然の状態で花が咲いてくるのです。日本だと、夏は日が長いので、日を短くする操作が必要になりますが、熱帯ではそれは不要で、いつでも日が短いのです。

 ★これは、営利的なキク生産をするには、たいへんにありがたい気候です。でも、熱帯は暑すぎるのではないかと反論する向きがあるかもしれません。これは簡単なことです。高冷地で栽培すればよいのです。

Cベトナム・ダラット高原でのキク栽培風景

D中国・海南島でのキク栽培電照風景

 ★マレーシアの軽井沢といわれるキャメロンハイランドは、海抜1400mほどの高地ですが、ここでは、地の利を活かしたキク生産がたいへんに盛んで、2億本以上のスプレイギクが日本に輸出されています。写真Aはその栽培風景で、収穫直前になっています。たいへんに規模の大きい施設です。写真でそのスケールが分かると思います。写真Bはキク栽培用のハウス風景です。耕地という耕地は、キク栽培のためのハウスで埋まっています。温度的にはハウスは不要ですが、品質を維持するためには雨よけがあった方がよいのです。そして、赤道に近い地方では台風はありませんから栽培施設は簡便です。インドネシアもほぼ赤道直下の国ですから、このような栽培適地がたくさんあります。将来キクの大産地になるかもしれませんね。日本も頑張らねばなりません。写真@のような渥美半島の電灯がいつまでも消えないことを願っています。

 ★マレーシアに比べると赤道から少し離れますが、ベトナムのダラット高原も海抜1500mほどあって気候が快適で、キクがたくさん生産され、日本に輸出しています(写真C)。この高原はキクだけでなく、カーネーションやバラも輸出しています。中国の海南島は標高が低く、このため温度が高すぎるので、冬だけの生産ですが、やはり電照でキクを作り、日本に輸出しています(写真D)。

 ★キクではありませんが、赤道直下の国、たとえばアフリカのケニア、エチオピア、南米のエクアドル、コロンビアなどは、たいへん良質なバラやカーネーションなどの花を生産する代表的な国で、世界各地に花を輸出しています。