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園芸豆知識・面白い形態編





締め殺すのはガジュマルだけでない(アンコール遺跡群の締め殺しの木)
図 鑑






@カンボジア・アンコール遺跡のタ・プローム寺院で見られる建造物に絡みつく巨大な根

A同上

B同上

C大きな板根のある巨木。おそらくTetrameles nudiflora

Dガジュマルの近縁種の締め殺しの様子。
 ★カンボジア・アンコール遺跡では、石造建造物に巨大な根が絡みついている異様な風景が見られます。熱帯ならではの風景です。巨大な根が石造物を破壊していると云ってよいでしょう。巨木ですから、その根が石を締めつける力は巨大です。

 ★樹の大きさから見てかなり昔から遺跡が放任されていたことが伺えます。もはや、現在ではこの樹を取り除くことも出来ないし、むしろ、この状態そのものが遺跡であると考える方がよい段階のようにも思えます。そして、この巨根が石造建造物にはびこっている風景そのものが観光の売り物になています。特に、タ・ブローム寺院は代表的な観光スポットになっています(写真@AB)。

 ★アンコール遺跡の観光案内書やネットなどでは、この植物がガジュマルであると紹介されています。しかし、これはどうも間違いで、この植物はガジュマルあるいはガジュマルの仲間ではありません。ガジュマルなどで見られる気根の姿とは異なります。むしろ、この根の姿は、熱帯の樹木でよく見られる板根(「板根の話」参照))の様相に近いように思えます(写真C)。

 ★そのつもりで周辺を眺めると遺跡の内外に板根を形成する巨木が多数あります(写真C)。一方で、石造建造物に絡みついている巨根の上部付近をよく見るとたいへんよく似た板根状の根が形成されています(写真B)。

 ★熱帯樹木の専門家ではない私にはこの樹を同定するほどの知識はありませんが、遺跡内で見た学名を記載したパネルにはTetrameles nudiflora(テトラメレス・ヌディフロラ)とありました。また、現地の人に名前を聞けばスッポン(Spung)だといいます。
 
 ★あらためて現地語のスッポンの学名を調べてみたら、この学名はやはりTetrameles nudifloraでしたから、現地の人の発言と学名のパネルとは一致していました。

 ★このテトラメネスはダティスカ科の高木で、板根を形成します。そして、この巨木はこの寺院内にいくつも生育しており、見事な板根を形成しています(写真C)。そこで、私は推測するのですが、どうもこの植物の種子が石造建造物の上に落ちて発芽した場合に、このような変形的な板根を形成するのではないかと思えます。樹冠の雰囲気も地上に根を張って生育しているものと似ています。

 ★この植物は当然にガジュマルとは全く無縁です。たとえ、この同定が正しくなくても、形態から見て多くの場合はガジュマルとは無関係であることは間違いないと思います。

 ★しかし、この石を締め付けている巨木をさらに絞め殺すガジュマルが、網の目状に多数の根を絡めている壮絶な光景も一部で見られます(写真D)。これはガジュマルそのものではなく、ガジュマルの近縁種のように思えます。ガジュマルに絡まれた樹木は、やがて死滅し、絡んだ方のガジュマルはやがて独立することでしょう。凄い生存競争といわざるを得ません。このガジュマルの近縁種はFicus gibbosaと思えます。