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園芸豆知識・雑学編@植物と民俗、お国ぶり編





ラオス紙と和紙、コウゾ、ミツマタのこと






@ラオス紙の漉きこみの風景(ラオス)

Aラオス紙を漉き込んだ後の乾燥風景(ラオス)
 ★ラオスの古都ルアンプラパン近郊の農村地帯で、農家副業として和紙が広く作られています。いや、和紙との表現は失礼で、ラオス紙と呼ぶべきでしょう。この国では西洋紙でないこのラオス紙がまだまだ生活に密着しており、ノートを始め、日常生活にこの紙が広く用いられています。工業的に生産されたものとは異なって、何とも言えぬ風合いを感じます。そして、何かアジアの文化の原点に立ち返るような気分にもなり、なんだか、和紙の故郷を見るような思いがしました(写真@A)。


Bミツマタ

Cカジノキ

Dコウゾ
 ★このラオス紙の原料はカジノキです。そこで、このカジノキのことから、「和紙とは何だ」とついつい考えを巡らせてしまいました。和紙の原料植物は、ミツマタやコウゾが有名です。

 ★まず、ミツマタEdgeworthia papyrifera)はジンチョウゲ科の植物で黄色の美しい花が咲きます。日本の山野に広く自生しており、観光名所になっているところもあるほどです。しかし、これは、日本原産の植物ではなく、中国原産です。和紙の原料として導入されて栽培されたものが野生化した帰化植物なのです(写真B)。

 ★さて、カジノキ(Broussonetia papyrifera)は、クワ科コウゾ属の植物で、メコン川流域のインドシナ半島〜中国南部が原産地です(写真C)。しかし、カジノキはミツマタ同様に日本にも帰化植物として自生しています。カジノキはコウゾにたいへん近縁の植物ですが、それもそのはず、コウゾは、カジノキと日本に自生するヒメコウゾ(Broussonetia kazinoki)との雑種なのです(写真D)。

 ★和紙の原料植物の原産地から考えて、和紙はその製造技術が中国から伝来したとき、その原料植物もほぼ同時に導入されたと見ればよいのでしょう。このように原料植物のことを書いたのは、ラオスを訪ねたとき、「和紙」という言葉に何か違和感を感じたからです。

  ★和紙は西洋紙に対比する言葉、いわば、対義語のように思う感覚が日本では強いようです。しかし、西洋紙の対義語は東洋紙でなければならない、そうでなければ、アジアの国々に失礼ではないかと思えます。というのは、紙の世界では、日本が東洋を代表している訳ではないからです。もともと、和紙は中国から導入されたものであって、日本で独特の発達をしたのは事実ですが、でも、それぞれの国でもそれぞれ独特の発達をしたと理解するべきなのではないでしょうか。

  ★中国には中国の、韓国には韓国の、ラオスにはラオスの素晴らしい「和紙?」があります。中国や韓国への旅行客が、山水画や書の掛け軸を何の疑問もなく買いますが、これらが決して「和」ではなく「中国」や「韓国」の紙に書かれたものであると思いめぐらすことはほとんど無いのではないでしょうか。これらは一連の「東洋紙」なのです。でも、「東洋紙」という言葉は日本ではあまり一般には使いません。日本の単語ではこれらを総括して表現する言葉が無いのが不思議です。ついつい中国の和紙、ラオスの和紙などと失礼な表現をしてしまいます。

★ところで、「東洋紙」は、タイやラオスから輸入されて、「和紙」として、日本で販売されています。また、カジノキそのものも和紙原料として日本へ輸出されています。