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園芸豆知識・雑学編@植物と民俗、お国ぶり編





茅葺屋根のこと Aアジア編





 ★茅葺屋根は身近にある自然の植物を用いて雨よけの屋根を作る知恵であったと思います。しかし、現在では手間や経費のかかるものとして敬遠され、日本の農村部でも見かけることが少なくなりました。ヨーロッパなどでは茅葺屋根はむしろ贅沢な屋根材になっています(豆知識「茅葺き屋根@南アフリカ編、Bヨーロッパ編」参照)。


@マレーシアのジャングル内の高床式住宅

Aカンボジアの農村地帯で見る高床式住宅
 ★茅葺屋根は、世界各地で見られますが、東南アジアの国々では、まだ原点とも云える実用的な使われ方が残っているように思います。もちろん、観光地の建物などでは装飾的な意味合いで使っている場合もありますが、まだまだ身近な屋根葺きという印象が強く感じられます(注記:ここで云う茅葺きは植物の茎葉で葺いたもの)。

 ★熱帯アジアの多湿な地帯では高床式の住宅がかなり見られます。今ではこれもトタン張りやスレート張りなどが多くなっていますが、それでもまだまだ茅葺きがかなり見られます。多くの場合は椰子の葉を葺いています。オウギヤシやニッパヤシなどが多いように思えます。このような住宅は壁面も同じように植物素材を使っており、身近な材料で住宅を造る原点のようなものを感じます。(写真@A)。

 ★高床式でない農家住宅でも、同じように、屋根、壁面共に身近な植物素材を使った素朴なものが多くの国で見られます。たいへんに貧しさを感じる農家住宅もかなりあるのは事実ですが(写真DEFGなど)、必ずしもそうではない豪華なものも見られます。





 ★以下には国別の紹介しますが、屋根を調べるために歩いているわけではありませんから、必ずしもその国を代表する茅葺き屋根というわけでは無いことをあらかじめ断っておきます。


Bミャンマーのインレイ湖の水上建造物

Cミャンマーのインレイ湖の水上建造物
 ★ミャンマー:写真B、Cはインレイ湖の水上建造物です。いずれもかなり立派な建物で屋根は整然と葺かれています。水湿地ですからおそらくヨシを使っていると思います。

Dミャンマーの農家の住宅

Eミャンマーの農家の住宅
このような立派な建物もありますが、同じミャンマーでも、純農村地帯では写真DEのような住宅が多く、こちらの方が農民の生活の実態を示しているように思えます。壁材などには竹をふんだんに使っており、身近な材料を工夫している様子がうかがえます。





★マレーシア:写真@は熱帯ジャングル内の原住民の高床式住宅ですが、屋根はヤシの葉、壁面は竹を編んだもの、柱は丸太と身近な材料で簡便に作っていることがよく分かります。





H農機具を置く簡易な小屋 (インド)

Fインドの農家の住宅

Gインドの農家の住宅
 ★インド:写真FGはデカン高原南部の熱帯といえる地域の農家の住宅ですが、素朴な生活風景を感じます。東南アジアでは骨材や壁面などに竹を使うことが多いのですが、竹の少ないインドでは不整形の丸太を使っています。トラクターなどを入れる農具舎などでもヤシの葉を葺いただけの簡便なものを各地でよく見かけます(写真H)。いずれも、なんだか茅葺屋根の原点を見るような感じがします。軒先を切りそろえる感覚は無さそうですが、あるいは、インドの気候では切りそろえない方がよいのかもしれません。







I屋根葺き材に使うためにニッパヤシを乾燥している。

Jニッパヤシで葺いた農家の住宅

Kベトナムで見た本格的な農作業小屋(ニッパヤシの葉葺き)

Lベトナムで見た入母屋造りの本格的な茅葺き


 ★ベトナム:メコン川河口にはニッパヤシの広大なマングローブがあります。このニッパヤシの葉を使った屋根がベトナム南部ではたくさん見られます。ニッパヤシの葉を乾燥させる風景も各所で見られれます(写真I)。これを使った屋根は、住宅にも使われていますが、どちらかと言えば物置や農作業小屋とか、道端の産直売店などで使われている場合が多いように思えます(写真J、K)。かなり素朴な雰囲気です。一方で、かなり高度な茅葺き屋根も時に見かけます。写真Lは入母屋造り風の本格的な家屋で、やや粗雑さを感じるものの厚みもあり、軒先も切りそろえてあり、日本の農村の茅葺きと同じような雰囲気でした。






Mインドネシアの農家の住宅

Nインドネシアの園芸店の休憩所
 ★インドネシア:ジャワ島で見た茅葺き屋根(写真M)の建物は周りに廊下があるかなり裕福な雰囲気を感じる農家の住宅でした。壁面などは、竹をふんだんに使っており、その網目模様などは芸術的な感じさえ受け、さすがに竹が多い国らしさを感じましたが、屋根はやや粗雑な印象を受けました。写真Nは園芸店の休憩所の建物ですが、これは柱も壁面も全て竹作りで、たいへんに美しいものでした。両方共にカヤを使っているように思えましたが、軒先を切りそろえておりません。






Oタイで見た茅葺屋根(ヤシの葉葺き)
 ★タイ:タイで見た茅葺き屋根(写真O)は、かなり大きな立派な建物でしたが、ヤシの葉を使っていました。






Qアンコール遺跡付近の観光土産物屋の茅葺き屋根(ヤシの葉)

Rまれに草葺きの屋根も見られる(カンボジア)

Pカンボジアの農家の高床式住宅の茅葺き屋根(ヤシの葉)
 ★カンボジア:農村部の住宅は高床式が多く、茅葺きがかなり多く残っています(写真P)。アンコール遺跡付近の土産物店は簡単な構造の建物が多く、これらは全てヤシ葺きでした(写真Q)。この国ではまだまだ茅葺き住宅が標準的な農家住宅と見てよいように思えます。屋根の素材はほとんどオウギヤシの葉が使われているようですが、希に草葺きの屋根も見られます(写真R)。






S-1 韓国済州島で見た茅葺屋根

S−2 韓国済州島で見た茅葺屋根
 ★韓国:済州島で見た茅葺屋根(写真S-1S-2)はやや丸みのある独特の屋根型で、ワラのロープをほぼ正方形に編んだネット状のもので萱を抑える葺き方でした。壁面は石積みなのが特異的でしたが、これは沖縄などの風の強い地域で見られる風景の雰囲気でした。さすが、韓国も茅葺き屋根は現在では少なく、ここでは茅葺屋根の保存のための行政の支援があるようでしたが、かっての貧しい農村の雰囲気が感じられました。





 ★茅葺きの素材となる植物は、アジアで見る限り、茅(主にススキ)もありますが、ヨシの仲間、イネ、ムギ等のわら、ヤシの葉、チークの葉などの多彩な材料が使われており、特に熱帯地域ではヤシがかなり目立ちます。日本でも琵琶湖の湖畔など湿地帯のある地域ではヨシ(アシ)がかなり多く使われるように、当然のことながら、その地域で入手しやすい材料が使われています
 ★アジアの国々の農村地帯でも、トタンなどの簡易な新しい屋根材を使うようになっており、また、余裕があれば瓦を使う傾向になり、次第に、日本と同様に茅葺屋根は減少する傾向にあると思えます。アジアでもヨーロッパで見られるように次第に富裕層のものになる流れがあるのかもしれません。しかし、本来の茅葺屋根は、身近に得られる植物を用い、農民がお互いに助け合いながら作ってきたものですから、まだまだ、アジアの農村地帯ではそう簡単になくなるとも思えません。

 ★日本の茅葺き屋根は、厚みがあり、軒先がきれいに切りそろえてありますが、アジアの国々で見る茅葺屋根は切りそろえてない場合が多いので、何となく違和感を感じます。また一般的には厚みが少ないように思えます。いいかえれば、日本の白川郷の住宅などのような緻密な美を感じるものがアジアではやや少ないように思えます。