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園芸豆知識・雑学編@植物と民俗、お国ぶり編





砂糖が採れる椰子のこと






@アンコールワット。巨大な遺跡と高さを競うようにそびえ立つ椰子や右前方の椰子はオウギヤシ。
 ★有名な世界文化遺産であるカンボジアのアンコール遺跡群では、雄大な石造建造物を引き立てるような美しい樹形のオウギヤシがたいへんに目に付きます(写真@)。この付近の農村部で、ひときわ高くそびえ立つヤシを見れば、まずはオウギヤシで、街路樹としての利用も含め、かなりたくさん栽植されています(写真A)。このオウギヤシは、熱帯アジアのどの国に行ってもかなり普通に見られます(写真B)。

 ★オウギヤシが目立つのは高さが30mほどにもなる高木で、扇のように放射状に広がる葉を球状に広げた姿がとても美しいからです。


Aカンボジアの道端に植栽されていたオウギヤシ

Bミャンマーの寺院に植栽されていたオウギヤシ

Cオウギヤシの果実。直径15cm程度で、ココヤシより小型である
 ★しかもオウギヤシは実用性の高いヤシで、いろいろな用途があるのです。なかでも、砂糖が採れるのが有名ですから、サトウヤシ(砂糖椰子)の別名で呼ばれることが多いように思います。砂糖を作るのは熱帯ではサトウキビ、寒地ではビート(砂糖大根)が有名で、その他に、カナダではサトウカエデなどが知られていますが、この椰子から採る砂糖もなかなか美味で、実用性が高いのです。

 ★カンボジアを旅すると農家の庭先に、縁台などを置いてこの砂糖を売っている風景をよく見かけます。オウギヤシの葉で包んで売っていますが、これが丁寧に梱包されてとても美しいので、初めて見ると何を売っているのだろうかと思います(写真D)。開けてみると中に円盤状に固められた椰子糖が入っています(写真E)。

Dオウギヤシの葉を利用して美しい包装がされている椰子糖(カンボジア)

E開けてみると錠剤のような椰子糖が10個入っている(カンボジア)

F直径3cmほどに整形された椰子糖(カンボジア)
やや不整形で、いかにも手作りといった雰囲気です(写真F)。食べてみると舌先でとろけるようですが、まろやかな淡泊な甘みが心地よい感じです。同じ梱包のものが市内のスーパーマーケットなどでも販売されていますから、必ずしも土産用梱包ではなさそうです。

 ★農家の庭先の店は店舗と云うほどのものではなく、この砂糖がささやかに台の上に並んでいる程度です。時にロップ状のものを瓶に入れた商品や果実そのものも販売している場合もあります(写真G)。この縁台の横にはどこでもカマドと鍋が置いてあり(写真H)、砂糖を煮詰めています。まさに製造直売そのものです。

H売り場の横には泥で固めたかまどがあり、汁液を濃縮する(カンボジア)

J乾燥漂白したものを結束用のヒモとして販売していた(ミャンマー)

Kご飯を包んだもの。弁当の役割でもしていたのだろうか(ミャンマー)

L若い新芽を販売していた(カンボジア)


 ★オウギヤシはヤシ科オウギヤシ属の植物で、パルミラヤシともいい、インドネシアではロンタルヤシといいます。学名は Borassus flabellifer、原産地はインド〜ミャンマーなど熱帯アジアです(原産地は熱帯アフリカだとする説もあり)。このヤシはたいへんに多くの用途があり、実用性が高いので、熱帯アジアの各地で栽培されています。

Gオウギヤシの果実も販売している。縁台の上におばあさんが座って、椰子糖の包装をして右側に雑然と置いて売っている。(カンボジア)

I椰子の葉葺きの小屋(カンボジア)


 ★その用途の第一は先述のように砂糖を採ることです。花穂を切り取ると切り口からかなり大量の樹液が出ますが、これには多量の糖分が含まれています。高い木に登って、花穂を切り取り、竹筒を差し込み、毎日、この樹液を採取します。この樹液はそのままでも椰子ジュースとして飲用できますが、煮詰めれば砂糖になり、数日放置すればヤシ酒になり、さらには酢にもなります。20〜30mはある高木ですから毎日の採取はたいへんな作業です。樹液の採取は1本の木で30〜40年継続することができるそうですが、考えようによればかなり効率的な植物です。

 ★果実(写真CG)も食用になります。果実は若いものは生食でき、あるいは果肉を乾燥粉末にしたり、いろいろと用途があるようです。

 ★葉の用途も多彩です。まずは屋根葺き材としてきわめて広く利用されています(写真I)。乾燥して、結束用のひも、あるいは包装資材としても利用します。ミャンマーで漂白乾燥したものを結束用のひもとして販売していましたし(写真J)、切り花の結束にも使っていました。

Mインドネシアの習慣で、結婚式のなどに戸外に飾るベンジョールという竹飾り

N左のベンジョールにぶら下げる飾り
また蒸し米と思われるご飯を木の葉で包んだものを露店で販売しているのも見ました(写真K。インドネシアでは、結婚式の時などにベンジョールという竹飾りを2本門前に立てますが(写真M)、これにもオウギヤシの葉の乾燥品が使われます(写真N)。カンボジアでは採取したばかりの若い芽を販売していました(写真L)。さらに、団扇(うちわ)、帽子、かご、敷物などに加工しており、これらは実用品としてあるいは土産用の民芸商品として販売されています。

 ★葉の利用で注目されるのは、紙としての利用です。現在でも使う例があると聞きましたが、本当なのかどうか実見していません。しかし、かって、仏教の経典などに使われた古文書はかなり残っているようです。

 ★幹は材木として利用されます。堅くて耐久性があるので、建築材、家具材など多彩な用途に使われます。