園芸豆知識・植物の名前雑学編





宜(むべ)なるかな
図 鑑





 ★「宜(むべ)なるかな」の言葉も最近はあまり使わなくなったようです。そんな表現をしてもキョトンとした顔をされることが多いように思います。でも、本当に使わないのだろうかと思って、試しに、googleで「むべなるかな」を検索してみたところ126,000件ものヒットがありました。「宜なるかな」で調べるとこれも10,400件ありました。まだまだ死語にはなっていないようですね。

 ★ところで、この「宜なるかな」は、「いかにももっともなことだ」、「いかにもそのとおりだ」という意味を表します。その意味が分かっている人でも、会話の中で使えば、現在では多少「気障な」感じがするようになったように思えます。これを漢文式に書けば「宜乎」と書き(古語のようですが)、「なるほど」のような意味になります。

 ★では、何故この「宜」を「ぎ」とか「よろしき」のように読まずに「むべ」と読むのか不思議に思えます。この「むべ」は、植物の「ムベ」に由来があるのです。

 ★昔、天智天皇が近江八幡市の方へ行幸されたとき、老夫婦に長寿の秘訣を尋ねたところ、この地で秋に採れるこの果実を食するからだと答えたそうです。それに対して天智天皇が「むべなるかな」と云われたのが始まりとされています。「ムベ」が先なのか、「むべなるかな」が先で「ムベ」になったのか、私にはよく分かりませんが、いずれにしても、植物の「ムベ」がこの故事に関係しているのは確かなようです。この近江八幡市では、かなり最近まで、「ムベ」を皇室に献上していたようです。

 ★ムベは日本の山野に自生するアケビ科の蔓性植物で、アケビに似た実ができます。果実は鶏卵よりやや大きい形で、秋に熟すと暗紅紫色になります(写真左上)。実を割ると緑色の果肉と種がキウイフルーツのようにあって、口の中で種子をより分けながら果肉部分だけを食べます。強い味ではありませんがほのかな甘みがあり、なかなか美味です。

 ★アケビとの大きな違いは、アケビは果実が割れますが、ムベは割れないこと、そして常緑性であることです。ですから、ムベのことを別名でトキワアケビ(トキワは常磐と書き、常緑の意味)ともいいます。漢字で書けば「郁子」と書きます。学名はStauntonia hexaphylla。

 ★ムベは園芸的には緑陰樹として棚仕立てなどに利用しますが、鉢植えとしても流通しています。仲間のアケビも同様に園芸利用します。アケビは掌状の小葉が5枚ありますが、小葉が3枚のミツバアケビもあり、これは主に東北地方に多いようです。



ムベ
アケビ科ムベ属
学名:Stauntonia hexaphylla

アケビ
アケビ科アケビ属
学名:Akebia quinata

ミツバアケビ
アケビ科アケビ属
Akebia trifoliata