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インドネシア
(アジアの花事情)
(園芸文化・1998春号掲載の修正版)
バンドン付近の高原地帯の風景
 赤道に近いこの国は、熱帯のムードがあふれている。農村では稲刈りと田植えが同時に見られ。このように書くと酷熱の国と思われるだろうが、冷涼な素晴らしい気候の高原地帯がたいへんに多いのである。たとえば、バンドン精神で有名なジャワ島の大都市バンドンやその周辺のレンバン、シパナス、スカブミなどには広大な高冷地があり、プランテーション農業を彷彿させる有名なジャワティの茶畑が延々と続く。この付近では野菜もたくさん作られているが、花の生産をしている農家も多い。

 高冷地は、標高差によって温度が異なるが、基本的には一年中変化の少ないない冷涼な気候であり、台風もない。日の長さは一年中ほぼ12時間と一定で、日本の夏の感覚で言えば大変に短い。言い換えれば、一年中、3月か9月の気候ばかりなのだから、花作りには大変に恵まれた気候である。たとえば、キクでは、生育の初期にだけ電灯照明を行って、一定の草丈にすれば、周年的に一年中いつでも切り花が得られるのである。

 ここでは、キク、カーネーションなどの温帯性の花きや観葉植物などが作られている。観葉植物といえばインドアプランツであるが、熱帯では当然のことであるが庭木類や緑化植物としての用途もある。いわばガーデニングの素材となる。実は、この国の住宅の庭はたいへん美しい。私にはオランダの植民地時代の名残のように思えるのだが、古来からの伝統的なものかもしれない。今流行のイングリッシュガーデンではなく、インドネシアンガーデンということだろうか。

 このような消費層を当てにして、レンバンやバンドンなど、ほとんどの都市の郊外には、道端に観葉植物や花壇苗、盆栽などの生産直売農園が並んでいる。ときには300戸近い農園が延々と数百メートルも続く道路もある。ほとんど露天であり、店番がどこにいるのか分からないのどかな風景である。栽培管理しているときが店番と言うことであろう。個々の農家の生産規模は小さく、品質は必ずしも良いものではないが実用には十分なのだろう。

 切り花類では、スプレーギクの電照栽培が目立つ。深夜に寂しい高原の農村地帯を走っていると、キクの電照栽培がかなり行われていることに気がつく。孟宗竹より太い竹を柱にしたビニールハウスが多い。しかし、なかには本格的な鉄骨のハウスを持つ企業的大農園もあり、ここでは十分に立派な品質のものを作っている。大規模農園といえば、コチョウランなどの苗を、日本へ輸出している農園もある。カーネーションもハウスで作られているが、土壌消毒剤がないためか、見るほどのものは少ない。

 低地では高温を好むラン類の栽培が多い。作られている種類は豊富であるが、バンダとデンファレが多い。インドネシアでは標高差によって栽培される花きの種類が明快に分かれていることが大きな特徴であろう。スマトラにも花きの産地があるが、私は訪れたことがない。

 ジャカルタ市営の花市場は、深夜に開かれている。夜中の3時頃から活気を帯びてくる。農家は自転車やバイクで荷を次々と運んでくる。バンダの花が無造作に大量に並んでいるのは、熱帯ならではの風景だ。花の種類は豊富であるが、品質はかなりひどいもので、束ね方など扱いも雑である。バナナの葉が包装材としてかなり使われている。葉を大切にしようとする感覚はほとんどない。どうして葉を大事にしないのかと質問すると、花を観賞するのであって葉を観賞するわけではないと、明快な答えが返ってくる。この考え方は、かなり多くの国で感ずることで、日本ほど葉姿まで気にする国は少ないようだ。この市場は、中央の広い部分では近隣農家が持ち込みんで相対売りをしており、周囲を囲む卸店は高冷地産の花を主体に販売している。扱い量が多いのは、チューベローズ、グラジオラスで、これは、宗教行事によく使う花だそうだ。この国はイスラム教の国である。次いで、バンダ、ダリアなどが多く、その次がやっとバラ、キク、カーネーションなどの順となる。実は、市場で扱うのは大衆品が主体なので、このような種類構成になるが、実際に店を構える花屋で見ると、スプレイギクが最も多く、カーネーション、バラ、アルストロメリア、デンファレなどが並んでいる。この違いの理由は、高級品のほとんどが、市場外流通しているからで、市場の扱いは約50%程度しかない。ホテルやレストランなどでは、立派な品質のスプレーギクをアレンジしたものを飾っている。流行の最先端はスプレーギクのようだ。

 気候に恵まれたこの国は、既に花き園芸の素地はできつつあり、将来、最も注目すべき国のように思える。
住宅の庭園
バンドン近郊の観葉植物の生産販売 道ばたで販売もしている
スプレイギクの栽培 ハウスは全て竹製。一般の農家ではかなり品種の混ざった常態で栽培している。
 キクの出荷前の水揚げ これは農家の庭先。
ジャカルタの花市場でのバンダ。きわめて無造作に置いてある。
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