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中国
−アジアの花事情−
(園芸文化・1998春号掲載の修正版)
花屋(無錫市) この程度の品揃えのこぢんまりした花屋が多い
 中国では今、花ブームと言ってもよいほど花き園芸が盛んである。上海や多くの都市では花屋がたくさん並んでいる。中国は、経済の発展がめざましいうえに、国が巨大であり、その消費量も凄いものがあるようだ。

 花屋を見ると品ぞろいという点では日本に遠く及ばないが、アレンジした花を並べた小ぎれいな店が多い。最も多く目につくのはカーネーションである。それもほとんどが一輪咲きのスタンダードタイプなのが特徴的で、スプレー咲きはきわめて少ない。次いでバラが多いが、いずれも赤色を好むようである。キクは秋にはやや多いものの、他の季節は意外と少なく、白はあまり好まないようだ。鉢物はあまり流通量していないが、シクラメンに対する人気はかなり高い。

 花の産地のスケールはかなり大きい。雲南省の昆明市は海抜1900mの高原にある省都で、その近郊の昆明湖のほとりには、見渡す限りビニールハウスの広がる村がある。作られているのは主にスタンダードタイプのカーネーションで、常春の気候にも恵まれてかそれなりのものができている。1戸の栽培面積はせいぜい数百坪と小さいが、農家戸数が多いので、この村だけで200haにもなるそうだ。細い丸竹を骨組みにした簡便な大型トンネルといった感じのハウスだが、全て同じ大きさなのでなかなかの壮観だ。生産物はハウス群の中央にある産地市場に出荷され、そこから、上海や北京などの国内の消費地に発送されている。上海近郊にも花の農家は多い。ここではパイプハウスが主流だが、かなり近代的な施設が多く、やはりカーネーションが多い。なお、中国全体にいえることだが、暖房はほとんど行っていない。

 中国は将来、花の大輸出国になるのではないかと危惧をする人が多いが、現在のところは国内需要が旺盛で、切り花の輸出は少ない。しかし、ラン類を主とした組織培養苗については、輸出を前提に生産されている。昆明には培養施設を持った企業農園が6カ所もある。外資を導入したスケールの極めて大きい近代的施設で、多数の技術者がコチョウランなどの培養をしている風景は壮観だ。この苗はもちろん日本にも輸出されている。

 上海には昨年大きな花市場ができた。体育館を改造して造ったのだそうだが、なかなか立派な施設である。中は、農家が荷を持ち込んで相対売りする場所と卸店が並ぶ部分に分かれている。実は、わずか一年あまり前には、近郊農家が出荷する相対売り市場は、大都市上海でさえも道路上の露天で開催されていた。雨の日などはひどいものであった。交通のじゃまにならないような配慮からかどうか、市は夜に開かれていた。何百の農家が路上に持ち込んで、夜間に相対売りする風景はまさに奇観であった。新しく整備された花市場でも、この伝統を引き継いで、夜間に市が開かれる。相対売りである以上は、農家は不満な価額では売らないわけで、閉店の10時になると、売れ残った花を持って帰る。そんな農家が意外と多いのは、やや生産過剰の傾向が出ているのであろうか。それにしても大型冷蔵庫の普及していない現状を考えると、持ち帰った花をどうするのだろうかと不思議に思える。なお、遠隔地のものなどを扱う卸屋は、それなりの店を構えて販売しており、これは以前から卸屋街があったことを付け加えておく。花市場は上海だけでなく、杭州や青島など、その他の都市でも整備が急速に進んでいる。

花が多くなったとはいえ、価額はかなり高く、とても庶民のものになっているとは思えない。しかし、結婚式や葬式などは無理をしても花を使うようである。新婚の若いカップルが、花を飾り立てた自動車で街を走る風景もよく見る。花屋では、アレンジした花がおよそ1,000〜1,500円(日本円換算)で売っているが、こんな高い花がどうして売れるのだろうかと不思議にも思う。さる中国人が、花を持って歩くことは一種のステータスシンボルになるのだと極言していたが、そうかもしれない。彼女の誕生日に花をプレゼントするといった粋なことをする若者は結構いるのだそうだ。

今日の中国の花き園芸の姿は、10年ほど前には想像できないことであった。当時は、近代的な花き園芸といえるものはほとんどなかった。この数年で急速な発展をしたことを思うと、これは世界でも例を見ない速度というべきであろう。とはいえ、昔の中国人が花を愛でなかったわけではなく、むしろ花の文化には深い歴史がある国であった。ボタン、シャクヤク、キク、ツバキ、東洋ラン、盆栽などなど、深い伝統を持っている。私が初めて中国を訪れたのは10年前のキクの季節であったが、当時、各地の多くの寺院や公園、工場などでは鉢植えのキクの展示会が盛大に開催されており、むしろ日本よりはるかに盛んな印象を受けた。見事な大型盆栽が並ぶ展示栽培場が各地の寺院や植物園にあり、そこでは盆栽の伝統技術を守るための技術者の養成がされていた。無錫市では「蘭花房」という立派な市営の施設があり、東洋ランを展示、保存するとともに、愛好者の交流が行われていた。道路などの公共緑化もなかなかのものであった。当時のホテルや国営工場には花き農園が併設されており、近代的花き園芸というにはほど遠いが、装飾用の花を自家生産していたので、目に付くところではずいぶん花が飾られていた。このような花のあり方には、伝統技術を重視する社会主義中国らしい面目躍如たるものを感じたのであるが、花き園芸を愛好する素地があったからこそ、今日の中国の花の隆盛があると思えてならない。そして、これからもさらに発展する途上段階にあるのが現在の中国の姿であろうか。
花き市場の相対売場(上海市) 精文花き市場。夜間に開かれる。露天で開催していたころの雰囲気をを出すためか街路灯のような照明になっている)
ハウス風景(昆明市斗南村)
本格施設でのキク栽培(上海市)
中国シュンランの栽培(無錫市蘭花房)
大型盆栽(上海植物園盆栽園)
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