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インド・バンガロール高原の花

2007.3.5(10.20修正)
インドのバラの評論
 ★バラ輸入の現状の概要
 バラの輸入が増えている。その第一位の国がインドである。我が国のバラの輸入は、インド、韓国、オランダが多く、最近はケニア、エクアドル、ベトナムなどが増えつつある。韓国からの輸入は1998年頃から急増し、しばらく第一位の座にあったが、最近は横ばい気味である。これに対して、インドはこのところ増加傾向が続き、2002年には韓国を追い抜くに至った。そして、両国の差はかなり開き、現在はバラ輸入総量の約半分をインドが占め、インドからの輸入量は4000万本を超している。今後、インドの動向に注目しなければならない状況となっている。

 ★バンガロール高原のバラ産地としての強み
 インドのバラ切り花の主産地はデカン高原の南部の地域にあるバンガロール付近である。ここの産地としての強みは次のようなことであろうか。
 @海抜は900m前後で、バラ栽培に好適な熱帯高冷地気候である。
 A高地とはいえ、バンガロール高原は大規模な平原であり、広大な農村地帯がある。大規模なハウスを建設できる農地は十分に存在する。
 Bバラ生産者の経営規模はきわめて大きく、農場自らが輸出のマネージメントを行う能力を持っている。そして、一つの農場でも大ロットの取引に対応できる。
 C強風などの自然災害が少なく、簡便なハウスで栽培できるので、施設装備費が安価ですむ。
 D地下水は豊富にあり、乾期にも水不足の心配はない
 E人件費がきわめて安く、良質の労働力が豊富にある(1日の人件費は50ルピー=約130円)。
 Fバンガロールには空港がある。日本からは遠い国であるが、ヨーロッパ、日本の中間点にあることを考えるとむしろ有利な位置関係にあるといえる。東南アジア諸国への輸出にも好条件である。
 G経営者はかなりの資本力を持っているようである。

 ★バンガロール高原のバラ産地としての弱み
 さて、逆に弱みはどんなところであろうか。あえて上げるなら、次のような点であろうか。
 @空港までの道路整備の状況が極めて悪い。また、バンガロール空港からは世界の主要都市への航空便が少ない。
 A気候的には冷涼とはいいながら、夏期は30℃を超す高温になり、季節によってはやや高温に過ぎるように思われる。このため、花はあまり大きくなく、ケニアやコロンビア産より品質が劣る。
 B掛け流し式の養液土耕の管理法から見て、土壌に塩類集積する可能性が高いと思われ、将来、連作障害が問題になる可能性がある。また、地下水汚染など環境問題を生じる可能性がある。
 C電力が安定供給されていない。施設園芸には電力の安定供給は必須である。

 ★ バンガロール高原の気候とバラ生産について
 バンガロール高原は、標高は900m強で、高原としてはやや低いために、熱帯高冷地とはいいながら、温度が高い。植生的に見ても熱帯そのものである。そして赤道からはやや離れた北緯12℃付近にあるので、温度、日長などの季節変動もかなり大きい(図参照)。
 この気候とケニアの気候を比べるとたいへんに温度が高いことがよく分かる。ケニアは赤道直下で、産地の標高は1800m以上はある。首都ナイロビ(海抜1600m)の温度(図参照)と比べると、最高気温で約7℃、最低気温で約10℃はインドの方が高い。その分、ケニアの方が同じ品種でも花の大きい良質品が生産されることになる。逆に、インドの方が開花までの到花日数が短くてすむので、生産性ではインドの方が有利であるが、その場合は価格面でメリットを出すより他にない。エクアドル、コロンビアとの関係も同様である。したがって、国際的に見れば、将来ともに高級品の産地とはなり得ない宿命にあるといえようか。
 熱帯高冷地の花き産地はアジアの各地にあるが、バラの大きな産地は少ない。スプレーギクの産地として有名なマレーシアのキャメロンハイランドとこのバンガロール高原とを比べても何かと対照的である。キャメロンハイランドは標高が1500m程度と高いので、最高気温で約9℃、最低気温で約6℃低く、バンガロールよりかなり冷涼である。また、北緯4度と赤道に近ことから年間の季節変動はほとんど無い(図参照)。日長の季節変動もほとんど無く、周年的に短日(可照時間ほぼ12時間) である。

 ★品質について
 バンガロールのバラの品質はかなり良さそうである。しかし、ケニア産、エクアドル産などに比べると品質が悪いとの意見もある。たしかに、温度が高い故の現象として、花は小さいと思える。実際に、農場間の品質格差がかなりあるよう思えたが、しかし、実用的に見てそれほど問題になるとは思えない。
 ここで、品質とは何かといった疑問が湧いてくる。インド産バラについて多少の問題指摘がされながらも現実に輸入量が増加の一方であることは間違いない。適当な値ごろ感もあって受けているのも確かであるが、一方で、その値ごろ感に対応する品質が評価されているのも事実であると思える。実際に、花屋でも国産品との区別が明快に分からないままに取り扱っている場合もあり、あるいは、区別が分かったとしても、利幅の大きい扱いができる商品として歓迎され、国産品と同じ価格で販売されていることも多いように思える。逆に、形態的な面からだけ云えば、日本産の品質が世界で最高のものと言い切れるのであろうかとの疑問も湧いてくる。確かに、芸術的とも云える商品が国産品に存在するのは事実であろう。専門店などの一部の利用場面では、芸術的商品も必要ではあるが、商品としてみたときには品質はロットとの関係でも考えねばならない。大量流通する時代になって、大ロット内での均一性もまた品質の重要な要素なのである。バンガロールに限らず、輸入品はこの強みを発揮していると見て良いのではなかろうか。もう一つ、品質にとって重要なことは日持ち性である。輸入品は輸送時間が長く、かつ植物検疫や通関の時間もかかるから、それ故に国産品よりも日持ち性が悪いとの意見は、説得力がある説明なので、これを信じ込みやすい。しかし、インドは確かに遠いが、日本からの時間距離は8〜10時間程度である。夜行便なら翌朝には届く距離なので、この論理は必ずしも正しくないように思える。午前中に通関と検疫は終わるのが普通である。蛇足かもしれないが、翻って、日本の国内流通を見れば、どれほど迅速なのであろうか。市場が休みの日もあれば、開催されていても現実には裏日や表日がある。収穫してから、小売店の店頭に並ぶまで、何日経過しているのであろうか。さらに消費者に届くまでに何日経過しているのであろうか。国産品が新鮮であるという根拠に自信があるなら、収穫日を表示するぐらいの情報提供をする勇気が必要なのではなかろうか。せめて、産地表示と日持ち保証をするぐらいの勇気を消費者に示せないだろうか。そして、国産品は優れているという差別性を示さなければ、輸入はこれからも増加する可能性がある。輸入品もそれなりの品質になっていると見るべきであろう。何故に、ケニア産、コロンビア産やエクアドル産のバラが、国産品よりも高い価格で取引されるのであろうか。品質とは何かを考える上での大きな課題のように思える。
 客観的に見て、インド産のバラは日本のエンドユーザーに受け入れられる程度の品質を十分に供えてきたと思えてならない。

検疫上の問題点
 品質と関係することであるが、輸入品には植物検疫という大きな障壁がある。バンガロールの産地では、害虫の防除にはかなり留意しているように思えたし、実際にほとんどの農場で害虫を見かけることはなかった。病害もほとんど見かけなかった。ただし、一部の農場で、ホワイトフライが大量発生しているのを見かけたし、またウドンコ病が散見された。そして、実際には、インド産バラが日本に輸入されたときに、植物検疫をパスせずに、燻蒸処理を受ける確率が平均で50%にもなっている。これは、品質上大きな問題である。この薫蒸処理率は当然に農場間の差があり、かなり燻蒸処理率の低い農場もある。おそらく、輸入業者も、品質管理の良い農場を今後さらに選択していくであろうと思えるので、将来は薫蒸処理率も下がって行くであろう。しかし、現在においてはこの問題はかなり大きいと云わざるを得ない。

大規模経営とそのマネージメント能力
 バンガロールのバラ栽培農場の経営規模はとにかく大きい。そして、現在も栽培施設の増設が行われている。日本のかなり大手の輸入業者でも多数の農場を相手に取引しなくても、一つの農場か少数の農場を相手にするだけで、たいへんに大きなロットの取引ができる。さらに、インド側の農場自身が高いマネージメント能力を有しているので、インド国内のブローカーを介在させる必要性がない。この点は日本のブローカーにとってかなり有利な条件になるように思える。韓国産バラを追い越すに至った大きな理由はこのあたりにもあるのではなかろうかと思える。

インド産バラの生産性
 バンガロール高原では、強風などの自然災害が少ないようで、栽培施設はきわめて簡易である。したがって、単位面積あたりの設備投資費用はかなり少なくてすむ。さらに、労賃もきわめて安い(パート労働者の賃金は日当1日130円程度のようである)が、労働者の質はかなり高いように思える。培地は土耕で、特に経費をかけていない。また、1平方メートルあたりの切り花収量は150〜200本程度であり、かなり高いといえる。このような背景を考えると、バンガロールはかなりの価格競争力を持つ産地であるといえよう。

インド産バラの国内消費と、日本国内での位置づけ
 インド産バラはインド国内で消費される量もかなり多い。バンガロールは主産地ではあるが、他にも産地があることを考えると、インド国内でのバラの消費はかなり多いものがある。バンガロールの花市場での取引状況を見ると、視察した時には1本4〜5円前後で取引されていた。これはたいへんに安価である。最も日本輸出用のものは、品質的にも厳選されるのでそんな価格では買えないが(FOBで15円ほど欲しいとの発言あり)、いずれにしても日本側から見て値ごろ感があるのは間違いない。ただし、輸入にあたっては運賃、諸経費などの方が経費がかかるという宿命があり、最近は国際的な重油価格の高騰は、輸送費の高騰を招いている。このことを考えると、輸入価格がむやみに安くなるとは思えない。日本のバラ切り花価格は、安価な輸入品の増加とともにかなり低落してきたが、現在かなりの限界に達していると見て良いのではなかろうか。
 インド産バラの我が国における地位は、我が国の生産者あるいは産地がしっかりした販売戦略を立て、正しく対応するならば、今後、極端に高くなるとは考えられないように思える。
 国内消費の大きい輸出産地は一般的に云って、たいへんに力強い。それは輸出できない格外品をすべて国内消費に回すことができるからである。インドはその条件に十分にかなっているので、今後も世界の産地として発展する要素を持っていると思える。