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ベ ト ナ ム の 花
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ダラット高原の花き生産の概要と評論 更新2011.11
更新2011.11、更新2006.4、初.2002.2
ダラット市
緯度北緯11度56分
標高約1500m
市域人口約20万人
 ベトナムといえばベトナム戦争。抗日、抗仏の戦いに続いて、世界最強の国アメリカにまで勝って民族の独立を果たした凄い国とのイメージが強い。戦いに疲弊したであろうと思われる経済も順調に回復しており、ホーチーミン市内で見る花の消費もなかなか活発である。

 この生産基地はホーチーミン市の北東約350km、自動車で6時間ぐらい走ったところの高原都市ダラットの近郊一帯に広がっている。街の郊外にはプラスチックハウスが密集している。かなりの面積である。栽培される品目は、キク、カーネーション、バラ、トルコキキョウ、クジャクアスター、ガーベラ、グラジオラスなど多彩である。野菜の生産も多い。

 ダラットは、北緯12度付近にあり、、海抜は1500m前後なので、気候が温暖な典型的な熱帯高冷地気候である。平均最高温度は24.2℃、平均最低温度は15.6℃、若干の季節変動はあるが、年間を通じてほぼ一定に推移する(表参照)。日長時間は11〜13時間の間で多少変動するが、変動量はかなり少ない(キクの大産地である北緯4度のマレーシアのキャメロンハイランドに比べれば変動幅はやや大きい)。降水量は年間1775mmで、乾季雨季の季節変動はあるものの、水量は十分にあると見て良い。日照時間は多く、植物生産には適している気候である。

 ★この国の輸出意欲は高く、特に対日輸出に積極的なように思える。この産地の60%がキクの生産であることから、輸出量もキクが最も多く1911年の植物検疫統計によれば約3000万本ある。ついで、カーネーション(800万本)、バラ(400万本)である。しかし、最近はやや伸び悩み傾向にあるように思える。

 ★あらためて、2011年11月の視察において感じたことを以下のようにまとめてみる。

@品質的に見て、生産農家によっては、それなりのレベルに達しているが、全体的に見ればまだ生産者間のばらつきが大きく、とても高いレベルとは云えない。収穫物の中から、良品を選んで輸出しているが(当然のことではあるが)、生育状況から判断して、その合格比率がかなり低いように思える。80〜90%が合格するレベルに達しなければ、国際評価は得られないように思える。ただし、品質は将来向上するであろうことを念頭に置いて考える必要があり、現状の品質だけで判断するのは問題があるが、少なくともまだ高いレベルにあるとは云えないように思える。

ベトナムからの輸入切り花量(万本)
植物検疫統計より
品目
1908年
1909年
1910年
キク
2287
2954
2944
カーネーション
830
946
811
トルコキキョウ
1
5
35
オンシジウム
1
100
94
コチョウラン
17
27
40
バラ
321
444
437
レザーファーン
130
368
464
A生産環境の整備が非常に遅れている。栽培面積が広がっている関係もあると思えるが、農道などの整備が遅れており、自動車が入れないハウスもかなりある。収穫物の運搬は肩に担ぐか天秤棒で行っているような光景は普通に見られる。狭い農道を1km以上も運び出すような例さえある。急斜面を切り開いた段畑に造ったハウスも多い。その意味で言うならたいへんに生産性の低いハウスもかなりある。現在も山を削って段畑状のハウス敷地の造成を行っている風景も見られる。ここでは機械化はほとんど不可能であろうと思える。一方で、ハウス内を大型のトラクターで耕耘しているような例もかなり見られる。まだ、ハウス建設が十分に出来る農地もまだ多いように思える。この矛盾は何だろうかと不思議に思える。土地の使用権の問題があるのかもしれないが、いずれにしても環境整備が追いついていないことは事実である。

Bカーネーションの品質は悪くない。しかし、土壌伝染性病害が散見される。生産農家に聞けば、土壌消毒は行わず、新しい土を客土することで対応しているという。土壌消毒をしないで連作対策が出来るならこれにこしたことはない。昔は、日本でも土の交換方式で連作対策を行っていた歴史はあり、その効果もかなりあるのは事実であるが、労働生産性の問題からは逃げることが出来ない。機械化などが進めばともかく、一輪車も入らないような労働環境の悪いハウスもあり、手作業で土を入れる実態から見れば、これはかなり問題なように思える。気候条件は恵まれているので、今後、何らかの方法で解決されるであろうとは思えるが、輸出産地だけに多少の驚きを感じる。

Cキクに関しては、生産量が多く、それなりのレベルに達している。マレーシアがスプレイギク主体なのを意識しているかどうか、輪ギクの「神馬」の生産が目立つように思える。環境的に見て、キクはダラットでは最も適した品目であると判断されるが、多少緯度が高いため、マレーシアのキャメロンハイランドより日長の季節変動が大きいので、その分は不利であろう。輸出産地としてはマレーシアとの棲み分けが将来の方向になるかもしれない。

Dバラは見方にもよるが気候は適していると云えよう。しかし、エクアドルやケニアよりも高品質のものを生産できる気候的環境にはない。しかし、インドと比べれば冷涼なだけにたいへん有利である。この国として、将来どのような特色を出すのかが問題かもしれない。

Eトルコキキョウはまだ技術レベルが低いようであるが、生産農家によってはなかなかの良品が生産されている。国内消費もかなりあり、これからは輸出量が増える品目のように思えるが、輸出量が多い台湾は冬が主体なので、周年出荷体制が技術的に安定するならベトナムも有力な産地になりうるように思える。

Fコチョウランの切り花の輸出は急増しており、我が国の切り花生産にとって大きな脅威となっている。高度な施設で栽培しており、栽培技術は台湾の技術そのもので、レベルは高い。おそらく、将来もさらに伸びるであろうと思える。

G輸出品の品質管理に十分な点があるように思えない。ケニアなどで見られるトレサビリティイがどの程度実施されているのか定かではない。産地からホーチーミンの空港に送られた荷物は、その日には発送されず、諸手続を経て、翌日の夜行便で日本に発送されるという。収穫調整時間と、航空便との時間調整の問題と理解したいが、何故その日に発送しないのだと聞けば、ベトナム人は夜は働かないなどとのふざけた回答が帰ってくる。輸出品は新鮮さが売り物だと思うのだが、そのあたりはどうなのであろうか。

Gこの国には、外資系の巨大農場があり、ここが最も大量に輸出のための斡旋を行っている。そして、提携農家と称するいわば下請けの一般農家の生産物の輸出販売も扱っている。これらの農家の栽培指導も行っていると云うことである。しかし、このベトナムが、本格的に輸出産地として伸びるためには、民族資本などの強力な複数の輸出業者が育ち、競いあうようになったときのように思える。そして、その兆しはあるように思えた。ベトナムの一般農家は視察を歓迎してくれるが、一部ではあるが、日本からの花き業界の視察者を歓迎しない閉鎖的な状況がある。閉鎖的であればあるほど、情報が偏るので発展の速度に自ずから限界が生じることは、日本の産地で見ても、既に実証済みのことであろうと思える

 上記のような問題点はあっても、輸出意欲は高く、価格競争のなかで、この国の輸出は増えて行くに違いない。今後、我々としても注目していく必要がある産地だと思える。

ホーチーミンからダラット高原へ 2002.21


ゴム園
 ホーチーミン市からダラット高原に向かって3時間ぐらい自動車で走ったころから、

茶園
延々と続くゴムのプランテーション農場がまず目につき始め、さらに走って標高が高くなってくると、茶畑とコーヒー畑が延々と続いてくる。そして、5時間近く経ったころ、やっとダラット空港近くにたどり着く。

コーヒー園
このあたりからキク、グラジオラス、クジャクアスターなどの露地畑とプラスチックハウスやネットハウスなどが目につき始める(2011年注記:現在は新道が出来て、旧道のこの路は通らないようだ)。概して小規模ではあるが、かなりの面積を栽培している農家もある。キクとクジャクアスターは電照栽培が行われ、明らかに日本の品種と思えるものが栽培されている。聞けば、台湾人が技術と品種を持ち込んだとのことである。キクはスタンダードタイプもあるが、スプレーギクが多いようで、年3作の周年栽培を行っている。品質はまあまあだが、よく見ると、かなり栽培技術の高い農家も見受ける。黒色の寒冷紗ハウスではアンスリウムの栽培も行っている。この路をさらに30分ほど走るとダラット市内に入る。市内近くにも大きな産地がある。